捕獲/脱走

堀田 千尋

担当教員によるコメント

堀田の作品は、ドローイングであれ、立体作品であれ、動物がなぜだかパーツで登場するのだ。かぎ爪を持つナマケモノの腕、クマの尻尾、コアラの鼻、ニワトリのトサカ、さまざまな動物の、部分のみが独立した状態で提示される。
それぞれの動物の表現がとてもリアルで完成度が高く、生き物の一部という異様ともいえる状態でありながら、ぬいぐるみという体裁が可愛らしさを醸し出す。
堀田の作品を前にすると、見たことの有るような無いような、好きなようなきらいなような、楽しげでありながら不安定な気分に支配される。この不穏なムードはなんだろう。非常に親しげでありながら私たちに疑問を投げかけ続ける、この緊張感が堀田作品を独特なものにしており、観る者の心に奇妙なざわめきを残す。

教授・吉澤 美香