地獄ごっこ

宮下 幸菜

担当教員によるコメント

地獄絵図。もともと宗教の一つの帰結として描かれたものだが、家の本棚、お寺、博物館などで一度は出合っていて、凄惨な図柄が記憶に残っているはずだ。私たちは、生死の問題にあまり関らずに暮らしているが、実は地獄とは表裏一体なのだ。悲惨な事故は地獄そのものだし、私たちは誰かが殺してくれて食卓に運ばれてくる、動物や魚を食べなくては生きていけない。しかし宮下のとらえ方は凄惨な一面だけではない。地獄絵図の人の表情に率直な感情やユーモア、過去の自分への戒めも感じるという。そういえば宮下の地獄図は阿鼻叫喚ではない。生き生きと地獄から這い上がる活力を感じる。紙をつなぎ合わせた作品は、最初廊下で描いていた。そして展示の日、縦5mの3点の大作は私たちを圧倒した。

教授・室越 健美