drawing sound

伊東 海

作者によるコメント

私たちが行う様々な動作の中には、常に何らかの音がかすかに流れている。描くという行為の中にもよく聴いてみると紙とペンがこすれる音が流れている。普段は何気なく鳴っているこの音だが、絵のタッチや画材など、描く行為によってこの音はめまぐるしく変化しながら流れている。視覚的な表現の中にある、聴覚的なこのかすかな音をまた違った表現にしたいと思い、制作した。

担当教員によるコメント

ひとは何かの動作をするとき、経験や思い込みから、無意識のうちにそれがもたらす反応や結果を先読みしています。それに対しこの作品は、行為と反応の関係性を問い直す試みでした。描いたつもりが、音として返ってくる。そこにもともとありながら、あたりまえすぎて気に留めてもいなかった音。こちらの先入観に対して「ズレ」とか「裏切り」とか、そんな感覚を去来させます。それはなにか「ささくれ」のようなものかもしれないのですが、調和しすぎたものよりもむしろ心地良かったりもします。そんな触媒のようなこの装置には、五感の分離と統合への、とっかかりが潜んでいると思います。仕組みと技術と表現の狭間で試作を重ね、無形のものを形にしていった「もがき」の賜物だと思います。

非常勤講師・東泉 一郎

  • 作品名
    drawing sound
  • 作家名
    伊東 海
  • 作品情報
    技法・素材:インスタレーション/画板、画用紙、画材、マイク
    寸法:H200×W300×D200cm