グラフォロジーフォントブック, 〜あらためて◯◯〜

澤田 由紀子

作者によるコメント

優れた人の筆跡を模倣すると、その人のパワーやスピリットのようなものを感じたり、活字より筆跡のほうが書き手の意思や環境が伝わってくることがある。一方で、私たちが日常的に目にする一般的な文章の印象は仮名によって大きく影響を受ける。この2点から、筆跡に特徴ある、芥川龍之介、宮澤賢治、金子みすヾ、石川啄木、室生犀星、江戸川乱歩、森鴎外、高村光太郎たち文豪8人の「書字行動」をヒントに8種類の「ひらがなフォント」を制作し、左からはグラフォロジー(筆跡心理学)による筆跡分析を掲載し、右からは制作した作家フォントで文学が読めるよう編集、デザインした。筆跡フォントによる印刷表現で、作家の息づかいを「あらためて」あじわえるきっかけになればと思います。

担当教員によるコメント

文芸作品を直筆原稿で見ると、作家の人柄や執筆時の気分が生々しく感じ取れ、興味深い。文章に使われている文字の60〜70%を占めるとされる「ひらがな」が、組版のイメージを大きく変化させることに着目し、作家の直筆をもとにしてひらがなフォントを作成した。筆跡に特徴のある文芸作家8名を選び、「書字行動」のクセを抽出するとともに可読性を保つようにデザインしている。最終形態は作家別に表1・表4の両側から読み進める本とし、グラフォロジー(筆跡心理学)による各作家の性格や人生の読み解きと、代表作を実際に文字組したものを一冊で楽しめるように工夫した。見慣れた常用の書体を使った印刷では失われている筆跡の力を引き出そうとする、実験的力作となった。

教授・小笠原 登志子

  • 作品名
    グラフォロジーフォントブック, 〜あらためて◯◯〜
  • 作家名
    澤田 由紀子
  • 作品情報
    技法・素材:ブックデザイン、タイポグラフィ、イラストレーション/Illustrator、Indesign、Photoshop、Fontgrapher、デジタル出力、墨、2mmボール、かがり糸、糊ボンド、寒冷紗 (手製本)
    寸法:H195×W135×D14mm(8点)