燃えた京島木造密集地

岡 美里

作者によるコメント

接道不良な住宅が建ち並び火事や倒壊の危険が大きく叫ばれている墨田区の京島は住宅地の癌とまで言われている。京島の火事はいつなんどきでもあり得ることであり大きな障害として私たちは共有する。火事や倒壊の危険性があるからと、すべてを再開発することで問題を解決することは暴力的であるとわたしは感じた。これは火難のあとを前提とする建築的提案である。建てることがすべてではなく、建てる・建てないの等しい価値観をもって土地を見ることが必要と考えた。

担当教員によるコメント

難産な作品だった。小説家と違い、建築家はなぜか、建前的なモラルを必要とするらしい。提案の前提への拒絶反応も激しかった。この作品はその建前の線引を疑い、建築を取り巻く、犯罪的行為(もしかすると「的」の文字も不要かもと岡は言いたいのだろう)を暴く。時に建築家は廃墟を愛でる。そんな生易しい自慰行為の先には、これほどの自虐的提示の方法が建築にあったのかと思うと背筋が凍る。 

教授・松澤 穣