petit 女性のための寝椅子

塚本 紗千

作者によるコメント

昔、椅子は権力がある王様しか座れないものでした。しかし、現代は女性が社会に進出し、働く時代です。頑張っている現代女性の安らぎの居場所となる寝椅子を制作しました。この時代の流れと、ポール・ケアホルムのPK-24という寝椅子は、ル・コルビジェのシェーズロングをリ・デザインして生まれたものである事に注目しました。「男性的で威厳がある美しさ」を持つシェーズロング。それをリ・デザインし、生まれた「中性的でシャープな美しさ」を持つPK-24。その流れから生まれた「女性的でしなやかな美しさ」を持つ寝椅子です。

担当教員によるコメント

「女性の為の寝椅子」をテーマとして、ポール・ケアホルムの名作PK-24を再解釈することでリ・デザインした作品である。家具の中でも椅子は、その時代の用途や目的、素材や加工技術といったことを反映してきた代表的な例として取り上げられることが多い。今では女性の寝椅子といえば想像つくが、具体例は少なく、数十年前のことを考えてみると、女性の為の椅子はあっても、寝椅子はなかったかもしれない。自然とそういったことをテーマに取り組む時代となったことを感じる。とはいえ、女性に特化するといったベクトルが行きすぎるとしっくりこないかもしれない。手業と工業の絶妙なバランスも含め、“中性的”な存在感をもった、いわば「今日の寝椅子」…。さわやかな魅力を感じる。

准教授・米谷 ひろし