感情図

早川 伸子

作者によるコメント

感情図
新しい設計方法を考える。風景・景観から経た感情を図面化させた「感情図」。感情とは常に変化し続け、人それぞれ違い、曖昧なものである。それを可視化することで人に伝える手法に出来ないかと考え、卒業制作では自分なりの表現方法を確立させるため研究してきた。最終的には新しい設計方法となることを目指している。

感情図のきっかけ
ある場所とその場所の図面を見たときに何かギャップ(差異)を感じた。そのギャップは何だろうと考えた時、その場所に行った人はそこから得られる「ここはあたたかいなぁ、気持ち良いなぁ、うるさいなぁ」など、色々な感情を持つと思う。しかし図面にはそういった主観的なものは載っておらず、形態ラインや数値などの客観的なデータのみが載っていることが通常である。それが感じたギャップなのではないかと考えた。そこで私はあえて主観的なデータが載っている図面があっても良いのではないかと思い、「感情図」を作ることに決めた。

感情図を確立させるために行なったこと
実際に道を歩き印象に残ったところを思い出しながら、写真など形態に捕われてしまいそうなものは見ずに、1シーンにつき1枚の図面(感情図9を思いのまま描いた。そこから一つずつなぜこう描かれたのかを分析していき、最後に「感情図のしくみ・凡例」というルールにまとめた。場所は通学路の橋本駅から多摩美術大学までを選んだ。

このように卒業制作では自分なりの表現方法をどうまとめていくかを研究してきた。

担当教員によるコメント

デザインするときランドスケープアーキテクトはその場所を勉強していく。と同時にその場所を自分の感覚で把握し、「夢」を描く。その「夢」はなかなか言葉では表しにくい。イメージとも違うものかもしれない。なんとかして、自分の中に浮かび上がった「夢」を第三者に伝えなければならない時もある。クライアントとの「夢」の共有はデザイナーにとってとても大切なものだから。そんなとき、この感情図は格好の道具になるように僕は感じる。感情図はその敷地から得た情報の積み重なりであり、かつ、その時に感じた自分の感覚を重ねたものである。どのようにこの研究が発展していくのか?結論は必要ない、これを考えたこと、考え続け深めていくことに僕は魅力を感じている。

教授・吉村 純一