Atoms For Peace

浅田 農

作者によるコメント

「Atoms For Peace」というバンドの歌詞ポスターを制作しました。彼らは自らを「一つの狂気の形」、曲は「子どもが走り回っているイメージ」と言っています。対立するかのような言葉ですが、私が小さい頃に紙の上を鉛筆で走り回った行為も一つの狂気の形だと思い、子どものような身体性を大切に表現しました。モチーフは歌詞の内容と、彼らの社会に対するアンチテーゼを今の私なりに解釈し織り交ぜ表現しています。

担当教員によるコメント

おおらかな広がりを演出する巧、芯をほんの少しずらしながらも気を引く術、見る側を浮遊させる妙等、浅田農の仕事には“センス”という言葉が常につきまとう。この卒業制作もしかり。社会に対するアンチテーゼを唱え続ける「Atoms For Peace」のポスター15連作にもその力量が充分に発揮されている。3年次後半から浅田のデザインに対する立ち位置が急速に明確になってきた。それは言葉のデザイン、すなわちタイポグラフィーへの強い傾倒が始まってからだと思う。ユニークなイラストレーションの魅力に隠れがちだが、目を見開いてもっとこの仕事を見てほしい。情報を伝えているオリジナルの文字群が作品の骨格をしっかりと構築しているのだ。浅田には“デザインセンス”がある。

教授・澤田 泰廣