息ができない

木畠 彩矢香

作者によるコメント

ふざけた勢いで友たちを溺死させかけてしまった少年の、罪悪感に苛まれる憂鬱とした心情を描いたアニメーション。水位が増していく町に沈んでいく少年は、やがて浮上も潜水もできなくなり、足のつかない深い水たまりの中心に一人取り残される。息ができないほど追い詰められる重苦しい心情を、徐々に水に沈む心象風景と重ねた。主な素材に砂を使用し、偶発的なテクスチャで統一することによって、少年の不安定な心情を表現した。

担当教員によるコメント

ガラス板の上に砂で描かれた絵を少しずつ動かし撮影された超絶技巧のアニメーション。その砂が醸し出すざわつきによって主人公の不安や焦燥感が見事に表現されている。3年次後期に初めてこの技法に取り組んだ作者は、さらに研究・発展させ部分的にアクリル絵の具で彩色を施すことによって「水」を表現した。主人公の後悔や、友人との距離感、誤解と和解といった非常に繊細な心の動きを、的確な芝居とカット割り、そして徐々に水没していく非現実的な心象風景と合わせて描いた演出はまさに神業。過度の抑揚を抑えた音楽の使い方も印象的で水没の閉塞感とラストの解放感を表現している。すでにいくつかの国際アニメーションフェスティバルで入選している本作は、世界が認めるクオリティだ!

教授・野村 辰寿