ちゅうちゅう

田中 涼子

作者によるコメント

男は生まれた。男は女と出会い、愛し、キスをした。この世界に変化していかない物はなく、命は形を変えて永遠に続いていくというテーマでアニメーションを制作した。1秒30枚のフルアニメーションにより、全ての物がもつ生命感を表現した。切り絵から影絵、ドローイングなど、様々な制作スタイルを使うことにより、あらゆるものを瑞々しく表現することを心がけた。男女は別れてしまうが、形を変えて再び出会う。「ちゅう」は永遠に終わらない。

担当教員によるコメント

切り紙を中心とした多技法で制作された超感覚アニメーション。3分強と短いながら、1秒に30枚使ったフルアニメーションには手間がかかる分、圧倒的な躍動感と緊張感が生まれる。心臓の鼓動に始まり、「ちゅう」という言葉をモチーフにしたラップ調の曲にあわせた展開は、「ちゅう」(KISS)という愛の行為が「ちょう」(BUTTERFLY)の翼を借りてどこまでも飛んでいくかのようだ。それはやがて宇宙に飛び立ち、他の生命と交わり融合し変化し続ける生命そのものを描き出す。曲もラップ調から夢幻の内宇宙を彷彿させるスケールに広がり再び鼓動で終わる。さまざまな技法に挑戦していた作者ならではの、単なるドローイングでは表現できないインパクトと予期せぬ展開で得も言えぬ不思議な魅力にあふれた快作!

教授・野村 辰寿