a point of view

井上 理恵

担当教員によるコメント

見られる者と見る者、事態に関与していた者が結ぶ視点と、もうひとつ現在の社会に蔓延している無関係の他者たちの視覚。北欧神話の「バルドスの死」を表す絵画作品に表された、殺された者と、殺した者、殺させた者と、その場所に居あわせた者達の視点を手がかりに作られた作品である。真っ暗闇の空間に横たわる屍を携帯電話のカメラで撮影する人々。その画像はTwitterで世界中に拡散される。見る行為と記録、さらに拡散の先に結ばれる無自覚な視覚体験が同次元で繋がっていく我々の時代。それらが神話世界の逸話により代弁され、明らかにされる。光がまったくない暗闇の世界に転がっている女性の亡骸はよく見えない。しかしモバイルフォンの人工的な視覚により記録されて、ようやく現実的なリアリティとして認められるのだろうか。

准教授・佐々木 成明