アポトーシス

荒井 直子

担当教員によるコメント

「アポトーシス」という言葉は、個体をより良い状態に保つ為に積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞死だそうである。作者にとってこの画題がベストかどうかは別として、人の尺度とは異なる時の経過により淘汰された自然の姿、生命が生まれ朽ちてゆき、又、再生するこの世の生命体の循環を主眼に、この大作に向う姿勢が大変な魅力ある画面となっている。以前に描いた抽象的形態の仕事は、ダイナミックな画面構成と、色彩には特異なものを感じさせる動的色感が作者の中での大きな魅力の一つでもあった。近作では、自然からの形態から導き出した写生があるリアリティーを生み出し、そこからの発想が大らかに飛翔してみえると同時に作者の中の透明感が空間の中に生まれつつあるように思う。手に入れた信実をより一層深く追求して欲しいと願っている。

教授・中野 嘉之