胎内

川副 麻里子

担当教員によるコメント

7枚のパネルを意図的にずらし、構成的に繋いだ縦3メートル幅6メートルに及ぶ大画面。はじめは幾何的なフレームの印象に目が奪われるものの、この作品の本当の魅力は、繊細さを極めた線描にある。体温を感じさせる色彩の海を漂うように、川副の描く毛細血管は何処までも先を求め、空間を覆い尽くしている。いつしかそれは、太古の地球を俯瞰するイメージともつながり、地上に生命体が誕生した最初の脈動に重ねる想いで、息を詰め描いていたのではないか。タイトルからもわかるように、人間存在に対する畏敬の念、いのちあるもの全てを慈しむ、作者の深い祈りがこの作品には込められている。

教授・武田 州左