平熱

原 杏奈

担当教員によるコメント

完成度の高い作品である。原さんの幼い頃見た車窓の記憶が日常化した大都会の夜景が正にそこにある。都会の夜の表情と、かつて彼女が見た夜の都会の記憶をたどる風情がこの大画面から垣間見る事ができる。過去の一連の作品には非常にカラフルな色と、情緒的で、ともするとセンスの良さが先に立つ心地良い作品が多く見られた。その作品群の着地点をどう解決するかその末が気になっていたが、この卒業制作に向う姿勢は違っていた。この大きな空間のより複雑な心理的描写、実像との心理的交叉に真正面から取り組んでいるところに今までにない彼女の進展があり、感動的である。「平熱」という画題は彼女らしいが、人に伝える画題に対して的確な言葉を探して欲しい。この大作をここまで仕上げた事は見事である。

教授・中野 嘉之