日常であり非日常でもある

藤野 南

担当教員によるコメント

昼と夜の風景が連なっている絵である。場所はモロッコ、藤野が旅をした異国の風景である。乾いた砂漠の小さな集落は、近代化された日本の風景とは様子が違う。見慣れない風景は、見る者を興味深く画面の中に導いてゆく。ところで藤野は何故、昼と夜を一枚につなげたのか。しかも同じ場所の昼と夜のような説明的な方法をとらないで。おそらくこの場所に旅人以上に深く入り込んでしまったのではないか。藤野は、夜の方が、活気があったと言う。人の記憶は断片的だが、思い出は総合的なストーリーとして形成される。だからこそ、その場所の二面性を統合し、記憶を確固たる思いでまで高めたのだと思う。昼と夜が同次元に存在する時間的な矛盾など、絵画特有の手段で楽々超越しているのだ。 

教授・室越 健美

  • 作品名
    日常であり非日常でもある
  • 作家名
    藤野 南
  • 作品情報
    技法・素材:キャンバス、油彩
寸法:H970×W3240mm
  • 学科・専攻・コース