富める森

堀江 香奈子

担当教員によるコメント

堀江の作品は一瞥では楽しく自由に描かれている。しかしその描き方は分析的で、堀江が絵画を構造的に考えていることがわかる。たとえば遠目では落書きのように見える葉は、近くで見るとクリームの絞り器に絵の具を入れて絞り出した細線であることがわかる。リンゴの部分も幾重にも線が重なり、さしずめレリーフのような厚みを獲得し、不思議な次元を作り出している。また、鳥の部分に平面的に塗られた色面は、その形態を説明するというよりは色彩のコントラストに重点が置かれ、形態と色面のずれや部分と全体の関係を考えさせる役割を持っている。このように一見楽しげな堀江の画面は、実は絵画を構成する色彩や線、マチエール、物質と平面性などの諸問題に向かっているのだ。

教授・菊地 武彦