Utopia of Holy Ribs

松丸 エミ

担当教員によるコメント

一見、版画を思わせるような黒と白の世界。簡潔でメリハリのきいた作品は、インパクトを伴って視覚に飛び込んでくる。松丸は、一貫して「黒と痩身と日傘がアイデンティティ」というシリーズを続けてきた。作品は、自分の感情をもとにした一種のファンタジーであり、最も近い位置に存在するという。繊細な曲線による表現は、アールヌーボーや装飾美術との関連を想起させる。しかし、それらとは少し趣を異にしているように思われる。紐状のフォルムと人体は、互いに絡み合い形成しては消失し、生成と消滅の物語を繰り返す。そんな小さな物語に崇高との関連がみえてくる。生々流転の物語は、画面に緊張感を与え絶妙なバランスで釣り合いながら、内部の形式性に留まることなく深淵な世界へと誘ってくれる。

教授・木嶋 正吾