卒業制作優秀作品集2015
絵画学科版画専攻
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- 瓶子 愛理
しみ
技法・素材:リトグラフ
寸法:H90×W60cm
私は、今まで人物の顔を描いてきました。私が描く顔は、一見無表情で簡単に感情を読み取ることができません。ですが、複雑なものでも単純なものでも、それぞれ何らかの思いを秘めています。この隠された心情を具体的にはわからずとも、鑑賞して下さる方々に感じ取っていただけるような作品を目指し、描いてきました。今回の「しみ」という作品は、アルビノの患者の肌が白いために、日焼けのシミがとても目立つのですが、そのシミの雰囲気、感じが独特でとても綺麗だと思ったので、私の描く顔の作品で、この美しいシミを表現できないかと考え描きました。技法については、リトグラフの基本であるアルミ版の他に、ベニヤに描画をし、さらに彫って刷ることのできる木版リトグラフを用いています。今まで版を重ね、カラーで作品を制作してきたので、アルミ版と木版リトグラフを併用し、別の素材の版を重ねて刷りました。
担当教員によるコメント
顔は人それぞれの個性が色濃く現れるもの。瓶子さんの作品に登場する人物たちも同様に、どれも個性的な存在感を醸し出しています。決して手数の入った作品というわけではありませんが、作者の視点とモデリングセンスは、現代的で独特な雰囲気をもった人物像として表現され、そこには不要なものをできるだけ削ぎ取った美しい潔さがあり、良い意味での軽さ、心地よさすら感じられます。作品に描かれた人の日常に於いて、ふとした瞬間に見せる表情はリアルであり、見る側に何かを伝えようとしているかの様にも感じます。リトグラフの軽快でグラフィカルな技術を更に研究し、作者のスタイリッシュな感性を今後も展開して頂きたいと期待しています。
准教授・佐竹 邦子