M

西岡 愉季子

担当教員によるコメント

腐敗とは細菌や酵母などによって有機物が分解されることだが、発酵との明確な境界はなく、人間にとって有益なものを発酵と云うに過ぎないらしい。納豆の好みが大きく分かれる由縁である。西岡のモチーフは腐敗、いや分解の進んだ果物である。日に日に無機物へと還元される過程を克明にとらえて模刻、彩色し立体的に再現している。朽ち果てるものへのまなざしは、ドナテッロのマグダラのマリアや二十八部衆の一つ婆薮仙人など洋の東西を問わず向けられてきたが、西岡の視線は天と地、生と死、善と悪、美と醜、といった二元論的思考というよりも、むしろ東洋的な全てが渾然一体となった無分別の思考が現れている。

教授・水上 嘉久

  • 作品名
    M
  • 作家名
    西岡 愉季子
  • 作品情報
    技法・素材:FRP、アクリル絵具、透明樹脂
    寸法:H45×W140×D140cm
  • 学科・専攻・コース