つかわしめ

細越 ゆかり

担当教員によるコメント

近年日本美術再発見とでも言うように、19世紀末の日本美術が盛んに紹介されている。20世紀末に生まれた今の卒業生達の中には、1世紀前の美術に対する憧れのようなものがあるように見える。この作品も明治の金工家「海野勝岷」の作「蘭陵王」「太平楽」に触発されたものである。これら宮内庁所蔵の寄せ物として組上げられた金工作品について、研究調査された文献を私は知らない。つまり制作上の詳細は不明なのである。当然ながら作者は手探りの中、知る限りの技法と現在到達した技量で作り上げた。この仕事を古臭い物の焼き直しと見るか、過去から学び新しい造形へと向かう挑戦の助走と見るのか、見解は異なるであろう。全てはこの先の、作者の創作活動に委ねられている。

非常勤講師・関井 一夫