Shi-kiri 余白を生む家具

石黒 瑛子

作者によるコメント

洋の生活様式が主流となっている現代の日本の住まい。しかしそれは本来の日本の空間のあり方に対して窮屈に感じる。今一度、日本人の空間の捉え方を見つめ直す“余白を生む”家具の提案。

担当教員によるコメント

「しきり」をテーマとした棚の実製作。日本の空間デザインにおける仕切りは、世界的にも注目されている。一言でいえば「意識の領域」であろう。物理的に強固に仕切るようなものではなく、いわば遮断でもなく解放でもない、それらの中間で、緩やかに仕切る方法のことである。そういった気配の伝え方と同時に、ものを飾り、整理することを、シンプルな引戸で調節ができる「仕切り棚」である。それは提案というよりも、受け継がれてきたことへの再認識、その姿勢こそ今日的だといえる。選んだ素材は、収納家具の素材として長年親しまれる「桐材」である。この素材は品質管理が難しいため、特別な素材となってしまったが、素材が持っている柔らかい空気が、空間も柔らかく心地よく仕切っている。

准教授・米谷 ひろし