奈楽

下山 峻

作者によるコメント

国宝、清水寺本堂舞台を参考し、個の檜舞台を構成する。釘や接着剤を用いず木組みの強度だけで成り立たせ、容易に分解でき、再度組み立てられる暮らしに身近な椅子の提案。

担当教員によるコメント

「継手」をテーマにした家具デザイン。あの有名な清水の舞台は東山の景色を望むことに醍醐味のある名所であるが、下から見上げた舞台裏の構造を眺めるのも壮観である。13メートルの舞台を18本の欅柱が支え、その縦横にいくつもの貫を通して接合している。縣(かけ)造りと呼ばれる伝統工法は格子状に組まれた木材同士が支えあい、衝撃を分散することで、施工困難な崖などでも耐震性の高い構造をつくり上げることができる。この伝統工法をもとに、小さな舞台(腰掛)がデザインされた。接合部分の「継手」には組み上げる際にわずかな隙間を設け、楔で絞めて固定をされるが、その楔を省略することで衝撃を吸収している。そのわずかな隙間=遊びは、数値化できない感覚のデザインだろう。

准教授・米谷 ひろし