怪獣風呂

橋爪 伸弥

作者によるコメント

ペンで描くという楽しみに存分に打ち込む為の手段としてアニメーションを選びました。4年間の集大成というよりは、次に作る物のきっかけになるような要素を今回の制作の中に探すつもりで取り組んでいます。自己にこもりがちなシュールの世界をなるべく外に開けたものにする為、ギャグという形を選択しましたが、この方向にしっくりとはまるものを感じました。次はより良いものを作ろうと思います。

担当教員によるコメント

シュールでナンセンスな展開を独自のボールペン画とポップな音楽で見せきった怪作である。懐かしさの残る下町の銭湯から、投げ込まれたセロリをきっかけに(?)突如現れた怪獣は下町で暴れ回る。建物はなぎ倒され、人々は逃げ惑うが、不思議な「のんき」が漂っている。変なかぶり物で顔を覆った主人公・佐藤靖夫なる人物が怪獣撃退に勤しむのだが、その手段と怪獣のリアクションがいちいちバカバカしい。しんみりした内向的なシュールではなく、賑々しく開放的なシュールを意識的に目指した故に、絶妙なユーモアの漂うエンターティメントに仕上がっている。ボールペンで1枚1枚描きこまれた作画の緻密さと、展開の軽妙さのミスマッチがなんとも奇妙な味を呈した逸品である。

教授・野村 辰寿