もしもの時のはちみつ手帳

浅野 真由

作者によるコメント

自分や家族が突然、病気や事故で病院に運ばれた場合や、災害時などの“もしもの時”に備えて、自分たちの健康に関する情報や、家庭ごとの緊急時のマニュアルやルールを決め、まとめておくための覚え書きの手帳です。また、手帳の後半には「読むページ」が設けられており、“もしもの時”のガイドブックの役割も果たします。この手帳を中心に家族間のコミュニケーションの場をつくり、生活習慣の見直しや健康管理のためにも役立ち、自分の生き方や責任、美しく人生を終わることについて考えるきっかけとなります。

担当教員によるコメント

発想から仕上がりまで淀みなく進み、リサーチ、コンテンツ、デザイン、ネーミングに至るまで、ほぼすべてが及第点を超える。しかし特別に際立ったところはない。透明であることが一番いいデザインという典型のような作品だ。そう言うと、手際よく汗もかかずにつくられたように聞こえるだろうが、制作中の作者の心情はいかばかりであったか。この作品のコンセプトは、家族の病気や死に直面したとき(もしものとき)にうろたえないように、常日頃からお互いの健康状態や家庭の情報を共有しておこうというものだ。制作のきっかけは父親の闘病だった。しっかりしたリサーチは看病の賜物である。しかしその甲斐なく御尊父は夏の終わりに他界され、手帳には没後の対応についてもしっかり付け加えられた。一見すると何の変哲もない小さな手帳に、人の命が込められている。

教授・永原 康史