一ツ家の女

今西 怜菜

作者によるコメント

コンセプト
女性が変貌する恐怖をホラー映画で描きました。



概要
私は人や日常が変貌することに恐怖を感じ、その中でも特に母親の変貌する姿に恐怖を感じます。そしてそれは私にとってトラウマのような存在です。自分の中でトラウマを扱い安心感を得てきた背景から、私は自分でトラウマを再現する映像作品を制作しました。

担当教員によるコメント

安達ヶ原の鬼婆伝説『黒塚』や浅茅ヶ原の「一つ家の鬼婆」をもとに製作された映画。人里離れた山奥で恋人達が遭遇する恐怖。男は謎の女の家に幽閉され、女も人骨が転がる穴ぐらに閉じ込められる。死んだ亭主を嘆き苦しんだあげく鬼と化した女がみたされなかった思いに駆られ他の男を囲って共に暮らしつづけようとする、物語の舞台は鬼女が住む山の廃家だ。自由を奪われて精神的に追い込まれた男はいつしか鬼女を受け入れてしまう。穴ぐらから抜け出した女がそんな二人を目にして、絶望と怒りからこの女もまた鬼へと変貌する。憤怒と自暴自棄から鬼へ変わり果てる人の心の弱さやおぞましさがこの映画のテーマだ。山中の静寂の中で追い込まれ変わっていく人間の様がモノクロームの色調で描かれる。

准教授・佐々木 成明