右向け左、前向け後ろ。

鎌田 潤一

作者によるコメント

日常の隙間には、世界の裏側のような形容し難い事象が存在していて言葉にしてまとめると崩壊してしまう。読解不可能なほど複雑で繊細だ。それから事象を抽出すべく自身が介入し要素を足したり、違うベクトルから踏み込み言葉を超えた世界を炙りだす。
日常を切り取るスナップ写真、身体を使ったパフォーマンス、仮説を立てる、デバイスを使うなど、写真作品を中心に思考したプロセスを含めた展示

担当教員によるコメント

写真やビデオやオブジェで作られたインスタレーション空間。「世界の裏側を展開させる」ことを試みると作者はいう。配置されている個々のイメージは日常風景の中で作者が発見した詩的な事象の数々である。「河川を流れていくカップ麺の容器に見る一寸法師」や「蛾のように蛍光光に群がる紙飛行機」あるいは「人の身体が覆われているかような形状で路上に投げ捨てられていたバイクのカバー」などの写真イメージが互いに関連性を持つように配置されている。数々のイメージがつらなる空間が鑑賞者の思考を促す。作者が日常の中から発見した物語的イメージによって空間が構築されている先駆的な試みである。

准教授・佐々木 成明