変容標本, The Specimen of Transformation

鈴木 彩文

担当教員によるコメント

物事の変化してゆく様子を連続的に撮影し、ひとつの画面に収めるという方法は、フランドル絵画から写真まで長く試みられてきた。この作品では植物、動物、鉱物を使い、21世紀の「ナチュール・モルト」を描いている。かつてマイブリッジは、「アニマル・ロコモーション」で動体を連続写真によって表現したが、それに倣えば、本作は「マテリアル・ロコモーション」と呼んでもいい。昆虫の変態や花の散る様子は、動物の動きとは比較できないほど緩慢だが、方法論的には「物質の変化」もまたロコモーションとして捉えることができる。見えない変化を見えるようにするという芸術の基本をおさえながら、「無常」の宇宙観を秘めているという点で、どこか東洋的な雰囲気を醸し出している。

教授・港 千尋