和紙と手漉きの研究

伊藤 謙二郎

作者によるコメント

私はPET樹脂板に真空成型で作成した型で漉くことによって、立体的に和紙を漉くことに取り組みました。その結果、従来の和紙には見られない表面の毛のような表情と薄さを持った立体和紙を作り出すことに成功し、今までにない紙漉きの技法を開発しました。水が抜ける穴部分に毛羽立ちが起こるため、穴の径や形、穴と穴のピッチを変えることで毛の長さや大きさなど毛羽立ちの表情のコントロールが可能です。この毛羽立ちにより、本来和紙の持つ特徴のひとつである軟らかさな印象をさらに際立たせることが出来、和紙素材の新たな表現が可能となりました。

担当教員によるコメント

:伊藤くんの提案は、紙という素材を製造技術から丁寧に顧みていくことによって生まれている。3Dの立体紙漉きは、これまでにも行われてきているが、彼の提案がまずユニークなのは、紙を漉く、水を抜く際に生じる繊維の毛羽立ちを、あえて立体物の表情として見せ、残している点だろう。それによって、ペーパーモールディングとは異なる紙の柔らかさを伝える表情が生まれている。型の製作にもアイデアがあり、真空成型を用いたことでサポート型を比較的容易につくれるため、球形状でも、もっと自由度の高い立体形状でも立体紙漉きの制作を可能にしている。照明、パッケージをはじめとするプロダクトへの今後の利用展開の可能性を大いに感じさせる提案となっているだろう。

教授・濱田 芳治