RETROSPECTION PROJECT, 絶滅危惧種のプロダクトを現代に蘇らせる研究

産田 拓郎

作者によるコメント

便利な道具で溢れる前の時代。誰もが口を揃えてこう言った、「ラジオは時代の最先端だった」と。ラジオは今も情報を伝えるメディアとして根強く残っており、3・11の時、最も普及率の増えたプロダクトでもあります。しかし機能や形は70年前から変化が無く、形が内部を覆うだけの箱となる事でネットラジオという形の無い姿に変化してしまったのです。しかし、データになる事で、流れては消える物だった放送が世界中いつでも聞けるようにもなりました。古い物をただ懐かしむだけではなく様々な時代背景を読み込み、従来の様なブラックボックスにはない一手間をかける楽しみ、確かな感触、機械と一体化するような操作感をそれぞれの役割や特徴を本来のラジオの在り方に回帰させてから、今の時代にリブートをする。インターネット時代でのこれからのラジオの新しい基盤を創り上げるプロジェクトです。

担当教員によるコメント

ノスタルジーのようなもの、手の感触、操作音、素材遣い、レトロさを伝える表現。産田くんの研究「RETROSPECTION」は、当初、古の廃れつつある技術、道具の形や素材の使われ方に着目するところから始まっている。卒業制作として取り組んだ「時代をチューニングする/行き来できるラジオ」は、どこかにラジオの持っていたノスタルジーさを感じさせながらも、インターネット時代の、これからの新しいラジオのあり方を提起している。時間を行き来する、様々な時代のラジオ放送を聴けるという魅力づくりも、音声データとしてラジオ放送をアーカイブ化して容易に遺せる状況にあることを、効果的に捉えた提案だろう。

教授・濱田 芳治