体の延長のように使えるマジックハンド

當木 なな穂

作者によるコメント

今まで使うことを諦められていた麻痺した体を”振る”動作によって、その先端位置までの知覚が可能になるということを発見しました。感覚の通っていない体を思いのままに動かせない頸椎損傷の方も、その先端位置を知覚することができます。手首の振る動きでつかめるマジックハンドによって、体の一部を扱うかのように直感的にものを拾えるようになります。

担当教員によるコメント

頸椎損傷によって肩から指先までの感覚がなくなった方のための、マニピュレータータイプの補助具の提案である。麻痺した身体の一部を含め自身の身体の延長のように操作ができる。前期研究では手と道具の関係について二つの実験を行っている。一つは道具の名前、機能、用途の認知と実際に道具を扱う手の動きの関係。もう一つは視覚情報を遮断した状態で、片手で持った棒の先端位置を予測できるか。後者の実験中に棒を振った場合の先端位置の予測結果が大幅に向上したことから慣性モーメントとの関係に着目した。実際に頸椎損傷の方に使用してもらい何度も実験検証をくり返すプロセス。真摯に問題解決に取り組む姿勢はデザインの本質と言えるだろう。

教授・大橋 由三子