DIAMONDS

石森 晴菜

担当教員によるコメント

石森さんは、“手で考える”という強い信念にもとづいて、綴織を応用し菱形文様が浮かびあがるタペストリーを制作した。その麻の織地には金糸が微かにきらめくが、一見、落ち着いた趣が保たれている。しかし、近づいて目を凝らすと細部の動的な表情に、はっとさせられる。数えきれないループが輝きながら鎖状に連続しコイリングの糸が集積して一糸乱れぬ群舞のようにリズムを刻んでいる。織ることに没入し小気味よく糸を操る織手の意識と身体の軌跡が文様になった。かたちを金色で埋め尽くしたことも興味深い。長い歴史の中で人は金の輝きに魅了され価値の象徴としてきたが、彼女はものをつくる手の根源的な喜びを賛美するために、金糸を緯糸として選んだのではないかと思えてくる。

教授・川井 由夏