紙のたな

松原 理沙子

作者によるコメント

「おぼろげなもの」である繊細な層をコンセプトに、紙の重なりの断面を見せる棚板を制作しました。丁寧に扱う棚という棚のあり方を提案します。

担当教員によるコメント

デザインは日常を考えることである。しかし、新しい価値観はその延長には無くて、その周辺に隠れていたり、遠くにあったりする。そこに辿り着こうとすればするほど離れていく。紙は、誰にとっても親しみある素材で、ややもすると固定概念の固まりのようなところもあるので、その魅力を紙の積層断面に絞ったところから地道な検証が始まった。そこからいかに固定概念を残しながらも離れられるかだった。それは遠くに行くことはせずに、近くにあるというイメージだったと思う。作品となった棚の一般的なイメージは、強度や耐久性といった“強さ”のイメージである。敢えて紙の“弱さ”を与えることで棚の概念をゆさぶり、違う価値観を提起してくる、、、静かではあるが強い作品になった。

准教授・米谷 ひろし