いろはに雅号

相原 智弥

作者によるコメント

雅号を紹介するための本
雅号とは、江戸時代まで名前は複数の名前を一人が持つことを認められていたが、明治時代にそれ以外の名前を持つことが禁じられた為に盛んになった風習である。そんな雅号の、自分自身がその生涯や生き様を踏まえて自ら名乗るという点に強い関心を持ち、雅号やその人物の生涯や作品を今に紹介するための本を制作した。同じく日本古来よりの文化である、いろは歌になぞらえて47名を選定し、それらをヴィジュアルと文字の両方でコミュニケーションする意図で制作している。

担当教員によるコメント

「よくぞ仕上げた」素直にそう思った。B全ポスター47枚の制作に匹敵する相原智弥の力作だ。テーマ研究に相当な時間を費やしているはずで、石川啄木から薄田泣菫まで、いろは順の登場人物を理解したうえでの「思考と造形」の大型エディトリアルオーケストレーション47作である。各人の雅号をイラストレイティブなロゴタイプとして制作し、1頁がB2サイズの大きさを活かして作家の作品紹介の文章をさまざまに組み分け、略歴を添えることで、情報[ファクト]と表現[イメージ]双方を調和よく構成した。本人が「蝸牛」と号して登場する。自分のペースで、これまでどおり愚直なほど誠実に、デザイン表現の本質を意識して、人生を大切に歩んで充実してほしいと願いつつ、期待している。

教授・木下 勝弘