代人

渡久地 菜生

作者によるコメント

自己世界を表現したイラストレーション
時、場所、接する人によって代わる代わる自分じゃない誰かがその時を過ごす。自己ととことん向き合い、彼らの姿を追い求めた。自分の中に存在する形を重ねていき、新たな形を生み出す。それを繰り返し一人の顔を描く。見えてきたのは追い求めていた代人の姿。自分の中から生み出されたその姿は自分自身の姿でもあった。この制作は自身が今まで受け入れられなかった代人の存在を受け入れ、これからを前向きに生きていくための成長過程には必要不可欠なものだった。

担当教員によるコメント

作品で人々に何らかの情感を伝えようとするならば、先ず作者がその表現に対する最大の感動者でなくてはならない。この域に自分を追い込もうと、渡久地菜生は制作過程における様々な手段を捨てた。純粋に描くことだけに没頭する道を選んだのだ。デザインの解釈を上手く利用すると、行うべき本質的な創造行為から逃避出来てしまうことに気付いたのかもしれない。表現者としての渡久地は人が真似出来ない絶対世界の持ち主である。自身の内面に潜む多種な人格をキャラクターとしてとらえたこの作品群も独自の色やカタチが凄い密度で表現されている。最高のコミュニケーションを生みだした見事な自己追求だと思う。

教授・澤田 泰廣