あの皮膚とわたし

辻野 和

作者によるコメント

皮膚に表れる症状と向き合うイラストレーション
掻痒感がわたしを襲う。気付けば皮膚に花が咲いている。痒みと共にわたしの皮膚に表れる症状をテーマにポスターと本を制作した。隠したくなるミミズ腫れの模様も一種の絵のように見えてくる。痒みも伴うが、自分の皮膚をキャンパスにし表現することもできる。小さなストレスでもありコンプレックスでもあるこの病を形にすることによって、限定的ではあるが同じ症状で悩む人も共感するイラストレーションを制作した。この小さなストレスをほんの少し愛せたタイミングだった。

担当教員によるコメント

辻野和は、「あの皮膚とわたし」というタイトルでイラストレーションポスターと詩的コメントで綴った作品集を制作した。また「皮膚に表れる症状と向き合うイラストレーション」というサブタイトルをつけた。誰もが様々な病気になった経験を持っているが、その軽度あるいは重度によってその人の印象は激しく異なる。そこの心のなかに映し出す感情を芸術的に表す能力が、私たちの仕事として重要だ。ただの説明ではなく心に染み込んでいくまたは、訴えてくる切なさがなければならない。彼女の魅力は、症状を少し突き放した視点がある。「掻痒感がわたしを襲う、気付けば皮膚に花が咲いている」なんと詩的な感性なのだろうか。

教授・秋山 孝