なめくじ

黒田 理紗

作者によるコメント

ある街に男がひっそりと暮らしていた。男は孤独だった。自分の事も周りの事も大嫌いだった。ある日女性と親しくなるが、一度拒絶された事に精神が過剰に反応し、男は幻覚が見えるようになる。男は塞ぎ込み、堕ちて行く。勝手な被害妄想に苦しむ自分。いつのまにか男は自分が陰湿で、なめくじのようだと気づいた。

担当教員によるコメント

翳りのあるロマンスを独特なタッチで綴った秀作。ナメクジの妄想に取り憑かれた男が恋に落ち、その妄想から脱しようとするお話。ゾンビ少女や神様キャラなどをモチーフにした過去作品でも、なにかしら暗がりのある世界を、ポップなタッチでバランスをとって成立させてきたのが黒田理沙の作風である。本作は今までのポップさはやや抑えられ比較的シリアスな世界観ではあるが、トンガリ鼻の主人公の造形、カラフルなナメクジの妄想などリアルに描きすぎない軽さが良い。ラストの海のシーンでの二人の距離感の演出や、時折インサートされる背景を描かないカットも主人公の心情を表現するのに良い効果を上げている。このダーク&ポップな世界で漫画、イラスト、アニメーションを横断して作り続けてほしい。

教授・野村 辰寿

作品動画