風のことつて

星野 章子

作者によるコメント

世界中を渡り歩く旅人のマスさんは、今日もまた新たな地へと足を踏み入れた。小雨がぱらつく中、雨宿りにと立ち寄ったバス停に、羽を怪我した風の子供と出会う。風な子供を群へと帰すため、二人旅が始まったのであった。子供の頃に感じた不安や焦りを元に、それらを含めて全てを愛おしみたいという気持ちを込めて制作した作品。ある街でその事件は起こった。犠牲者はタコにはじまり、日ごとに数を増していった。

担当教員によるコメント

黒いハットをかぶった主人公マスさんは、星野章子が制作するアニメーション作品で、いつも現実の少し外側を旅している。気がつけば時間や空間のスキマから異世界に迷い込む。本作はその不思議譚の3作目にあたる。主人公は怪我をした風の子供に出会う。一見鳥のようであるが、そうではない。その子供を群に帰す物語である。しかし物語よりその行程で出会う不思議な現象や風景、それによる主人公の気持ちのゆらぎが作者の表現テーマのようにも思える。なにか薄ぼんやりとした不安のようなもの…しかしそれは決して暗いわけではない。星野作品を見終わった時はいつも感じる、狐につままれたような印象。それは作者が確信的その夢幻を創造し、観客をその世界に誘っているから生まれるのだろう。

教授・野村 辰寿

作品動画