development samsara

天野 幹伸

作者によるコメント

スクラップビルドによってめざましく変わってゆく現代の東京を見て、建築物がまるで新たに生まれ変わる生物のように見えた。この作品ではそのイメージを元に、神話において破壊と再生の象徴である蛇をモチーフにし、大都市建築物の威圧的でありながら日々発展と成長をしてゆく進化の美しさの抽象表現を試みた。右側の作品から順に、「機能的」、「変動的」、「膨張的」、「象徴的」というサブタイトルがついており、これはそれぞれに素材として使用した建築物になぞらえてつけている。

担当教員によるコメント

その誕生から今日まで、写真にとって都市はもっとも魅力のあるテーマを提供してきた。同時に都市にとって写真は最大のメディアとして、自らを鏡に映し出してきたのである。メディアの性質がいかに変わろうとも、写真と都市との創造的関係が続いてゆくだろうということを、本作は雄弁に物語る。高層ビルは世界中どこに行っても似たようなものであるが、作者はあえてその無機質な外観をモチーフとして使う。鋼鉄とガラスの構造がデジタル特有のシャープな画面を作るが、さらにその硬質な建築が爬虫類的な形態へと変換される。ポール・シトロエンの代表作『メトロポリス』(1923)で描かれたコラージュ都市がバウハウス時代の都市像ならば、本作はデジタルバウハウス時代のそれであろう。

教授・港 千尋