木を割ることで生まれる造形の研究

伊藤 真之介

作者によるコメント

我々が普段目にしている木製のプロダクトの大半が、切断、切削、研磨等の方法で加工されています。ですが木は本来繊維の束であるため、鉈で軽く割ってあげるだけでも非常に美しい表情を魅せてくれます。この「割る」という技法を応用し、一見ただの木の塊のようでありながら、各々が全く異なる機能を持ったプロダクトを考案しました。

担当教員によるコメント

古の木材の切断では、楔を打った原木を滝から落として、割って切断していたという。伊藤真之介くんは、この『木を割る加工技法』に着目し、その応用利用の可能性を探している。木を割る加工技法の最も秀逸な点は、木の有効利用の観点だろう。作品に利用している檜材においても、材に節や曲がりのあるものは、製材時に不適材としてはねられてしまうが、伊藤くんのアプローチでは、節のある材であっても、木の個体差として魅力に変えることができる。また木を割る際には、木目に添って割れるため、割れ目でもう一度くっつけても、切断面がわからないぐらい目立たない。伊藤くんは、加工技法の特徴を良く理解して作品づくりに応用できており、オリジナリティの高い提案をつくれている。

准教授・濱田 芳治