ふいのまじわり

若山 春奈

担当教員によるコメント

製材された石柱の上部に、何かにそっと被せたような布の彫刻が施されている。その静謐な佇まいが、内部の物体へと見る者の意識を誘う。大理石の特質を生かした滑らかな布の質感表現とは対照的な角柱の垂直性が、彫刻本来の再現性と現前性とを融合させながら、相反する自己の内面を見事に象徴化させた作品となっている。かねてより「彫刻」の可能性を様々なメディアを駆使しながら拡張的に可視化を試みてきた作者であるが、絶えず求心的可能性を見据えた試行は孤独でもありまた、不可視な「彫刻」の実現への飽くなき挑戦であった。作者の中で「彫刻」とはまだ始まったばかりで終わってなどないのである。

教授・水上 嘉久