覗く

白石 味夢

担当教員によるコメント

矩型に磨かれた妖艶な石塊。周囲を巡るうちに一つの面に小さな穴が開けられている事に気付く。腰を屈めて覗いて見るが真っ暗で中は何も見えない。この穴はどこまで続いているのか、中は空洞なのか、何か入っているのか?五感を総動員しても決して内部の様子を窺い知ることは出来ない。作者は他者を知ることの困難さと不可能性を説く。他者という未知なる存在を石に置き換え「表面」という永遠のエロスを纏わせることによって、他者の不可視な「内面」を表現したのだろう。この作品の主役は紛れもなく磨かれた石の内部、「闇」であり、彫刻の影である。

教授・水上 嘉久