おりたたむ

西塚 まり恵

担当教員によるコメント

西塚まり恵の卒業制作のねらいは布に実用的価値をもたせることよりも、布の本質を暴くことを目論んだように思えてならない。折り紙を折るように布をランダムに折り畳むとそこには布の表裏両面の一部が前面に現れる。その前面全体に色を塗り、乾いたあと布を広げると直線で区切られたさまざまな形の色面がその布の表裏のあちこちに生まれ、畳んだ隙間から流れ込んだ色材は形に偶然的な輪郭をつくりだす。このように表裏に関係性のある作用を施すことで、作品は正面性を失い、見る者は自然と作品の周囲を回って鑑賞し始める。そして布には等価な二つの面があるのだということを思い出すのである。この作品で彼女は、とかく表の面を重要視しがちな平面造形の常識に軽やかな批判を突きつけたのではないだろうか。

教授・柏木 弘