生活の柄

小池 飛悠雅

作者によるコメント

ここで描かれたものはあなたの身の回りにも溢れる、ごく平凡な風景です。どこにでもある、しかし二度と辿ることのない道や雪の路肩。カーテンの隙間から溢れる光や、路傍に落ちる人の影。そんなありふれた風景の中に時折感じる、どこか情緒漂う瞬間を切り取り額に入れました。冴えることも、映えることもない単調な日々の中に弱々しく点在する煌めきや愛おしさが伝われば嬉しいです。

担当教員によるコメント

デザインにとって一番大切なことは、日常です。そのため、自分の感性に素直であることは、資質になり得ます。小池さんの作品は、イラストレーションを描いているのではなく、日常の感覚を伝えようとしているのです。描きたいものを描くのは表現の基本ですが、描きたいという衝動と、日常を見る視点が統合されています。ここには編集の視点があります。つまらないと思われる日常が発するメッセージを突き止め、見過ごされてしまう何かを示すこと。それを絵に転換することで、人に気づいてもらう。ゲルハルト・リヒターの芸術論に近い。現実を絵に置き換えることで、ある知覚に到達するという方法です。小池さんの作品は、そんな「行為としてのデザイン」として、注目に値します。

教授・山形 季央