タイムマシン

茂木 亜由美

作者によるコメント

私は日常のふとした瞬間に昔のなんでもないような場面をよく思い出します。そのときのノスタルジックな感情や浮かんでくるイメージはこれまでの自分の制作のベースになっていました。卒業制作ではその自分のテーマとも言える「記憶」と「感情」を形に残したいと考え、記憶のもとになる日常のグラフィックとその場面を表す一文を組み合わせたものを100点制作し本にまとめました。

担当教員によるコメント

「デザインは引き算の創造である。」茂木の仕事を見ていると何時もこの言葉を思い出す。ストレートなコンセプト。奇をてらわないアプローチ。カタチは大らかで大胆。色彩はシンプル。表情はテクスチャーを排除し平滑である。それなのに誰も真似することの出来ない世界を表出させる。言葉にしにくい感性の持ち主だ。卒業制作ではブックデザインに挑戦した。テーマは自身の記憶の集積である。茂木らしさを貫いたイラストレーションはそのままに、日時と状況が一行のコピーとして各ページに記されている。ビジュアルをより自由に解放させるための策なのだろう。200ページを綴じる製本もビスで数ヶ所とめただけのプロダクトだ。カジュアルである。けれども気品に満ちた強い存在感がちゃんとある。素敵だと思った。

教授・澤田 泰廣