Living records

西山 萌

作者によるコメント

「空白の時間」を記録するための、あたらしい時間の記録装置『Living record』を考案しました。スケジュール帳の空欄や一見すると何もない一日も、確かに私たちは生きていて、今この瞬間につながっています。しかし日記や年表で「出来事=点としての時間」の記録が残されるとき、その間の「空白=つづいている時間」は忘れられてしまいがちです。区切られた24本の縦糸に横糸を織り込んでゆき、年輪をモチーフに「つづいている時間=生きている時間」の象徴として制作しました。

担当教員によるコメント

人は、メモリアルな出来事の起こった断片をつないでいくことで時間軸や歴史性をというものを、認識し記憶していく。しかし、切れ目ない瞬間瞬間の集積によってできているのが現実である。その歴史や記憶にあらわれない時間を記録し価値化することができるのか、それがこの作品の大きなテーマである。情報の可視化を軸にしながらも、それぞれのブランドの時間の蓄積を表現する糸の持つ物質感が作品に美しさと強度を与えている。3年時に行った展覧会の時からこの時間というテーマにこだわり、様々なリサーチや検証したことで高い完成度のある作品になった。

教授・永井 一史