lose control

石川 優

担当教員によるコメント

古より、人は様々な物質を介して何かを伝えようとしてきた。現代の若者ならばさしずめSNSが主流であろうが、葉書や手紙などは、人手を介した時空の移動距離が世界をより広いものとして認識できたように思われる。石川の表現もまた現代においては伝達速度の遅い古雅な芸術の部類であろう。遅いと言うのは作品の解釈に要する時間ではなく、鑑賞者との関係性の問題である。作品が特定の場に存在することで鑑賞者と空間を共有した際の距離のことである。これはその場に立ち会わない限り体現できない唯一性でもある。黒花崗岩の肌理と色合いを残した鑿切りの仕上げには、石川の追求して来た表面へのこだわりが窺える。

教授・水上 嘉久