春子の告白

前田 巴那子

担当教員によるコメント

前田は入学時からの「映画美術監督を目指す」という信念を4年間貫き通した。そのために、学ぶことに対するモチベーションが人一倍高かった。当然、卒業制作も映画のための美術設計を選択した。「春子の告白」は、映画制作のために書かれた脚本である。当初は、最終審査会までに撮影を終える予定であったが様々な要因で頓挫してしまった。しかし、思い入れのある脚本のため美術設計を行い、見事に成し遂げた。映画美術は、脚本の物語のためだけの世界観を創り上げる作業である。コンセプトから、プロダクションスケッチ、そして単なる模型ではない「魅せる模型」製作へのチャレンジ。ショットも照明計画まで高いレベルで表現できており、明日にでも撮影が出来るクオリティである。映画館で、「美術監督 前田巴那子」のクレジットを見ることを楽しみにしている。

教授・山下 恒彦

作品情報

美術セット設計・模型

演劇舞踊デザイン学科の卒業制作について

演劇舞踊デザイン学科は「演劇舞踊コース」と「劇場美術コース」の2つのコースに分かれ授業が行われます。1、2年次はそれぞれのコースで基礎を学び、3年次には2つのコースの合同制作として上演制作実習を行います。その成果を踏まえ、4年次では本学科における最終的な目標である「卒業公演」に向け「演劇舞踊コース」と「劇場美術コース」との合同制作のさらなる質的向上を追求します。目指すは、プロのレベルに比肩し得る作品の創作です。「演劇舞踊コース」ではパフォーマーとしての表現能力を、「劇場美術デザインコース」では美術、照明、衣裳等のデザイナーとしての斬新な発想力やスタッフワークの実践力を最大限に究めるために演習と実習を積み重ねます。

演劇舞踊デザイン学科初めての卒業制作は素晴らしい内容でした。卒業公演「大工」は、東京芸術劇場で演劇コースと共同で上演され、観客を魅了する独創的でエネルギッシュな舞台表現でした。舞台・照明・衣裳ゼミが一体となり、脚本構成と連動した見事な舞台美術が展開されました。映像美術ゼミは、映画美術・PV・MV・インスタレーションと多彩な卒業制作が繰り広げられました。それぞれの個性と感性によって開花した意欲作が並びました。映画美術設計は、緻密で大胆なデザインであり、PV作品は総合的なセンスが感じ取れる秀作です。エンターテインメントデザインの評価は言うまでもなく、観客の皆さんが楽しみ感動してくれることに尽きます。観客のアンケートからも、その目標は軽くクリアしていました。