童話における郵便配達人, “Pohádka pošťácká”分析によるカレル・チャペック研究

今尾 日和子

作者によるコメント

チェコの作家カレル・チャペックの童話作品“Devatero pohádek a ještě jedna od Josefa Čapka jako přívažek”の中の一編、“Pohádka pošťácká”をとりあげる。主人公は郵便配達人である。手紙にまつわる文学・芸術作品において人格が与えられることが、ほとんどなかった郵便配達人に焦点を当てた意図を、原作および英・日本語の複数の翻訳を比較し多視点的に考察した。

担当教員によるコメント

チェコの作家カレル・チャペックを論じるのにあたって、翻訳の問題にぶつかるのは自然な成り行きである。『郵便屋さんの話』という童話の、日本語へ訳された数種類の本を並置したところから、テーマは現れたようだ。「語り手」の問題がそれである。この論文の見どころは、作家=語り手から読者へ至るプロセスが、「郵便屋」という作中存在の仕事と重なってくるところである。つまり、他人の手紙を別の他人に届けるという仲介者の仕事と、作家や翻訳者の仕事とが二重になってくる。論者は、原典や翻訳の細部に目を凝らすという正攻法を選ぼうとしていて好感がもてる。中途半端に終わる分析が多い点は残念だが、チェコ語という壁に挑もうとした姿勢は評価したい。

教授・平出 隆

  • 作品名
    童話における郵便配達人, “Pohádka pošťácká”分析によるカレル・チャペック研究
  • 作家名
    今尾 日和子
  • 学科・専攻・コース