「青」その深遠と神秘性の究明, 祈りの場であるキジル石窟と、金峯山寺の蔵王権現、シャガールのステンドグラスから考察する

鈴木 尚子

作者によるコメント

「青」は色の一つでありながら、古代から私たち人間に刷り込まれている、創生神話の空間、空や海の色を想起させるのではないかと考える。自然界の大いなるものとして、太古より人は太陽信仰とともに、空を見上げて祈っていたのではないか。祈りの場である「青」の「深遠」さと「神秘」の普遍性を、「光」と関連させながら、祈りの場である中国シルクロードの「キジル石窟」、奈良県吉野の「金峯山寺の蔵王権現」、ヨーロッパの教会の「シャガールのステンドグラス」を通して読み解き、究明する。

担当教員によるコメント

鈴木尚子さんは論文に取り組む以前、自ら「青」の染料による糸で現代のテキスタイル作品を制作してきた。本論文は「青」という色彩が、万人を魅了する「神秘性の普遍」を特別にはらむ色であることを証明するため、場所も時代も異なる三つの「青の芸術」、すなわち中国西域の「キジル石窟」、日本の「金峯山寺の蔵王権現」、「シャガールのステンドグラス」に表された青色の実相と象徴性を横断的に観察した。青とは人間が宗教空間において祈るとき、天空の色である「青そのもの」に触れる経験によって地上からの超脱の力をもらい救済されてきたことを論証した。近代ではシュタイナーの神秘思想や青を詠った詩人の作品までを紹介し、視覚芸術と思想・文学までを、いわば青の山脈によってつなぐ独自の手法を編み出した。他に類のない優れた労作である。

教授・鶴岡 真弓

  • 作品名
    「青」その深遠と神秘性の究明, 祈りの場であるキジル石窟と、金峯山寺の蔵王権現、シャガールのステンドグラスから考察する
  • 作家名
    鈴木 尚子
  • 学科・専攻・コース