卒業制作優秀作品集2019
芸術学科

野田 美紗子

ジム・ジャームッシュ『パターソン』の日常の詩
現代における退屈

ジム・ジャームッシュ監督作品『パターソン』はジャームッシュによる意思表明の映画である。劇中には詩的な⽰唆が満ちているが、我々からは多様さと豊かさが失われつつある。映画『パターソン』を読み解く上で、ウィリアム・カーロス・ウィリアムズやフランク・オハラ、さらに彼らと関わる芸術家は重要な要素である。本論考では、まずウィリアムズの詩と⼈⽣に焦点を当て、映画における⾔語外の「詩」について論じた。その「詩」が現代の憂鬱のさなかを⽣きる我々にとってどのように必要であるかを探る。

担当教員によるコメント

野田美紗子さんの「ジム・ジャームッシュ『パターソン』の日常の詩―現代における退屈」は、アメリカ映画界でハリウッドに依拠しないインディペンデントな生き方と作品づくりを続けてきたジム・ジャームッシュ監督(1953—)の『パターソン』(2016)をとりあげた論考です。パターソンはこの映画の主人公(バス運転手であり発表しない詩を書いている詩人)の名であると同時に、彼が暮らすニュージャージー州の町の名であり、またこの地域に暮らした医師・詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズの詩集の名でもあります。この重層構造を読み解きながら、映画からウィリアムズの詩に接近していく論はスリリングであり、英語の詩やインタビューの翻訳も含め評価すべきすぐれた論文です。

教授・西嶋 憲生

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